KÄÄPIÖ

多様化した現代女性のライフスタイルに寄りそう「ニットを越えるニット」

厳選された素材と都会的で研ぎ澄まされたデザイン、そして国内工場の技術との掛け合わせで編み出される「100年後も着たいニット」。KÄÄPIÖ(カピエ)のアトリエに並べられたピースの数々は、ニットとしての新たな一面を見せる。その奥深い表現力は、デザイナー・大島郁によって引き出されたものだ。デザイナーとして「研究」と「開発」を続ける理由、そして彼女が追い求めるものとは?

DESIGNER'S PROFILE :

大島 郁 Kaoru Oshima

セントラルセントマーティンズ芸術大学テキスタイル学科卒業後、ニューヨークに渡りパーソンズ芸術大学大学院ファッション学科に入学。2012年、ロロピアーナ社のスポンサーのもと、卒業コレクションをNYファッションウィークで発表。在学中よりDiane Von Furstenbergで経験を積み、卒業後はRalph Lauren Black Labelのデザイナーとして活動。2014年に日本に帰国しKÄÄPIÖを立ち上げる。2017年度 Tokyo新人デザイナーファッション大賞プロ部門入賞の他、受賞歴多数。

研究を繰り返して開発するニット

ーなぜニットという手法を選んだのですか?

テキスタイル学科で勉強する過程で特にニットに惹きつけられたのは、平面的なプリントなどと違い「テキスタイル(生地)」と「型」を同時に作っていくところがすごく奥深いと思ったからです。プリントでは表現できないような染めの色や構成、素材の組み合わせで新しいものを生み出せるという点にも可能性を感じました。

実際に、色々な編み方を研究して、トライしては失敗して、学んで・・・それを繰り返しながら「開発」していく感じです。

服というよりは「生地」であるテキスタイルを専門的に学んでいた私にとって、ニューヨークでパーソンズの大学院に入ってからは服の「型(パターン)」を勉強出来たことはとても重要な経験で、その学びがあったからこそニットの表現を深めることが出来たと思っています。

ー国内外で数々の賞を受賞されていますが、ご自身ではどのような点が特に評価されていると感じていらっしゃいますか?

技術的に新しいことに挑戦している点かなと思います。どんなに伝統ある会社でも、新しくて若いアイデアを取り入れたいとは思っていて、「テクニックを錆びつかせないためにも必要なんだ」と技術を求めて下さったりします。

ー「研究」や「開発」という言葉を使われるあたりに、職人のスピリットを感じます。

ニットの場合、編み方や使う機械や技術によって仕上がりがかなり変わるので、デザイン画のイメージと実際に出来上がるものは違うんです。私は新しいこと、布帛にもできないようなことをニットで実現したいと思っていて、そうするとやはり技術的なことを考えて、実験しながら技術を開発しないといけない。工場にも色々な個性があり、何を生かしてどの工場に頼むのかも含めて、デザインの一部です。

日常着とラグジュアリーを両立させる「ニットを越えるニット」

ニットという伝統的な手法をとっていても、KÄÄPIÖが追い求めているのは「ニットを越えるニット」なんです。

今、女性のライフスタイルが大きく変わってきています。働く人が増えて、毎日快適に着られてお手入れも楽にできる、そんな女性の服の需要が高まっているので、性質上シワになりにくいニットは実はとても実用性が高い。

だけど機能性だけでなく、シルエットの美しさも追求することで、これまでの「ニット」を越えていきたいんです。「日常着として成り立つ服」と「着る贅沢がある服」。それを両立させたいと思っています。

ー生産はすべて日本の工場で行っていらっしゃるんですか

そうです。日本はまだ国内で良いものづくりが出来るという、先進国の中でも稀有な状況です。ヨーロッパでは人件費などの問題もあり、熟練した職人がもう国内にほとんどいないことも多いです。ロンドンやニューヨークのブランドを見ても、実際に生産しているのは海外生産という状況で、高級ブランドほど、企画の意図と上がってくるサンプルが合わないということが多くありました。

今は大量生産の服が主流の時代なので、遠く離れた国の工場で生産をするブランドが多くあります。そのシステムではあまり細かなデザインの擦り合わせが出来ないので、ブランドは複雑なデザインは注文できなくなり、必然的に職人たちも簡単なものしか作らなくなってしまいます。

だからこそ今は工場のチョイスもすごく重要です。ある程度高級品を作っている職人がいる工場に頼まないと、せっかく選んだ良い素材も生きなくなってしまうので。

トレンドに流されず、自分に似合うスタイルを確立できたらいい

ーKÄÄPIÖの服は、どんな人のための服ですか?

働く大人の女性のための服です。そしてそんな女性たちのライフスタイルにおいて、ファッションは、単なる流行ではなく「自分に似合うスタイル」を確立するためのツールになっていけたらいいなと思っています。

ーKÄÄPIÖの服は色をとても大切にしていますよね。

できるだけ長く着ていただけるように、前シーズンのアイテムを今シーズンのアイテムに合わせてもコーディネートがしっくりくるように意識してカラーをオリジナルで作っています。

ー大島さんにとって、色使いやデザインのインスピレーションとなるものは何ですか?

色はトレンドも見てはいますが、お客様のイメージも大きいです。KÄÄPIÖのデザインを好きでいてくださる方と会ってお話して、こんな色が似合いそうだな、と考えたり。

デザインにおいては、持っていきたい方向性はありつつも「自分のブランドに人から求められているものは何か?」ということは常に考えています。自分が表現したいものもありますが、それとお客様とのギャップはすごく気になるんです。作り手が作りたいものを一方的に作るのではなく、店頭に立ってお客様のことを知りながら、どんなものが求められているかを考えて作っています。

現代的で、自立した女性に似合う服

ー2019AWコレクションのテーマは?

今回は、KÄÄPIÖの実力が出るようなコレクションだと思います。テーマは"bona fide"、「真実の」という意味です。

ありとあらゆるスタイリングが組めるようなアイテムを揃えていて、柄が入っているものも多く、柄同士を合わせても素敵になるように作っています。

KÄÄPIÖは決して全面的な女性らしさは打ち出してはいませんが、コンテンポラリーでありながら、着た時に自然と女性らしさが出る「シルエット」を追求しています。今回は、レースやフェイクレザーを使って合わせてみました。

質の良いベーシックアイテムも揃えられるようになってきましたが、どこか普通のベーシックではないベーシックにしています。肩線がないニットとか、ちょっとひねりがあるベーシックです。

2019AWコレクションより

ーKÄÄPIÖは自立した女性に似合いそうなイメージがあります。

そうですね、そういうデザインを意識して作っています。

ー今後チャレンジしていきたいことを教えてください。

作れるアイテムの幅も増えて、ニットでラインナップを組めるようになってきました。もちろんこれからもニットをメインにはしていきますが、色々な組み合わせでスタイリングすることも考えて、今回レースやフェイクレザーを取り入れたように、今後はデニムなど布帛も足していけるといいなと思っています。

Interview / Text: Takeshi Arita, Aika Seto
Edit: Aika Seto