SIIILON 2019AWコレクション

Designer's Backstage Talk

Oyui

ヴィンテージの洋服に大きな影響を受け、デザイナー・Oyuiが2014年に立ち上げたブランドSIIILON(シーロン)。これまでショー形式での発表を行っていない理由をOyuiは「機が熟すのを待っていた」と語るが、SIIILONの服で身を包むファンが既に数多く詰めかける様子から、このショーが多くの人にとって待望の瞬間であったことが伺えた。

「完全燃焼すること。とにかくそれを念頭に置いて作ったコレクションでした」

ブランド設立以来初となるショーを終えた後、徹夜明けのOyuiはバックステージで感想を語ってくれた。

「ファッションショーには五感どころか第六感にまで働きかけるような不思議な "空気感" がある。これまでは展示会のみで発表してきたけど、ショーを行うことはずっと憧れだったので、今回挑戦できたことはとても新鮮でした。やっとスタートラインに立てたのかなと思う」

2019AWコレクションを制作するにあたってテーマを設定したわけではないが、ひとつだけ、"Chain(鎖)"というキーワードが初めから浮かんでいたという。不自由や束縛、恐怖などのイメージを孕んだ言葉でもある。でも、アイデアのベースにあったのはあくまでも、自分の中に軸としてずっと存在しているもの、過去から切っても切れないものを表すモチーフとしての"Chain”だった。

実は大学時代までピアノの道を一筋に生きてきたOyuiの服作りにおいて、音楽にまつわる記憶は、想像以上に大きな影響を与えているらしい。特にクラシックやゴシックに通じる要素は、意識して盛り込もうとせずとも「どうしても現れてしまう」もので、こうした時にも過去の自分と今の自分の間にある切り離せない繋がりを感じると話す。

今回のコレクションでも、フラワーのモチーフやフリル、大きな襟など、少女らしさと大胆さを兼ね備えていながら少しのノスタルジーも感じさせるようなSIIILONらしさは健在。デザイナーとしてはこれまで一度も意識してこなかったという<かわいらしさ>を見出す人も、やはりこれまで通り多いかもしれない。

しかし今回は、かわいいだけではない<少しの違和感>をOyuiは仕掛けている。「もちろん、感じ方や受け取り方は人それぞれなので自由です」と前置きした上で、「私は自分の自信のなさやコンプレックスをカバーするものとして、ヴィンテージの服を着ることや、洋服で表現することを選んだ。同じような思いをしている人にとって、何か共感してもらえるポイントがあったり、SIIILONの服で少しでも気持ちが高ぶるような瞬間があれば、すごく嬉しい」と語った。

Interview / Text : Aika Seto

SIIILON:
2019AW TRUNKSHOW (2019-4-7まで)
https://seenowtokyo.com/collection/siiilon/2019aw