─── 2022A/Wコレクションのテーマについて教えて下さい
ドレスドアンドレスド 2022-2023 秋冬コレクションは、ダムタイプ古橋悌二氏 に献げました。悌二さんの遺作”LOVERS”を同テーマに、相互愛の神秘に対し、社会的秩序のロマンチシズムを表現しました。暗い空間の中で抱き合うような仕草をとるもの、走り抜けるもの、決して身体は触れ合うことなく重なり合っています。 ループ状のウォーキングシークエンスの中で、モデルはトロンプルイユの技法を用いたシャツカラーとシャツカフスのテーラリングへ鏡を徐々に散りばめていきます。鏡による複雑な写り込みの連鎖によって、私たちの体は不確かなものなのではないかと疑問を提起します。古橋悌二氏は、京都を拠点として1984年に結成されたアーティスト集団ダムタイプの中心メンバーとして活躍し、1995年にHIV感染のため他界しました。人間の置かれた困難な状況から目を背けず、真摯にヒエラルキーの消滅を願い続けたその姿勢は、今も私たちに勇気を与えてくれます。本作の音楽はダムタイプの立ち上げ、 創成期メンバーとして音楽と音響を担当してきた、山中透氏によるものです。
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─── あえて今回ダムタイプとのコラボレーションで"LOVERS"というテーマを取り上げたのはなぜですか?
私自身、コレクションを発表し続けることは、ある種の勇気を必要とする作業のため、人を傷つけることもあり、人から傷つけられることもある中、ダムタイプの作品から勇気をもらいつづける一人です。私にとっても”LOVERS”は大切な作品のひとつなのです。
物事は、こころで見なくてはよく見えない。いちばん大切なことは、目には見えないんだ。
サン=テグジュペリ | "星の王子さま"の言葉です。
大人は誰しもがはじめは子供でした。しかしそのことを忘れずにいる大人は多くはありません。重要なことを見極め、裏側に隠された愛情、誰かを大切に思うこと。きっと空を見上げれば、いつだってその人にとって大切な人が見守ってくれているんだと思います。目には見えなくても想いがあるのです。この作品を通して何を探しているのか少しわかったような気がします。新型コロナウィルスやロシア ウクライナ軍事侵攻に鑑みる不安定な社会情勢ですが、コレクションを通して少しでも希望を持つことが出来ればいいなと思います。人は今、試されているのだと思います。困難な時期ではありますが、みんなで助け合い乗り越えていきたいです。これからもきっと私はファッションデザイナーとして生きていくでしょう。しかし、ファッションという枠組みで私自身を区別したくない。私達は同じ人であり、同じ考えを持つ様々な人たち、美術家、音楽家、化学者、文学者…など様々な人たちと共感し、喜び合うこと。その感覚が私にとって重要なことです。
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