Seivson
生活をフリップし、ボーダーラインを超える
台湾で才能を発揮するデザイナー、ジーチン・シン(Tzuchin Shen)と韓国出身であり、台湾で芸能活動を中心に活躍するソン・ミジン(Song Mi-jin)が今季新たに開始したブランド「セイブソン(Seivson)」。異なる経験を融合させたクリエーションは、すでに他にない独特の雰囲気を醸成している。彼女たちが共にブランドを始めるに至った経緯から、カラーパレットやディテールへのこだわり、そして大きな野望まで。海の向こうからリアルで刺激的な話が聞けた。
ーおふたりがファッションの道を進んだきっかけは?
ジーチン・シン(以下シン):⼦供の頃から⺟が経営している⼦供服店のキッズモデルをしていたり、祖父も地元で割と有名な画家をしていた影響もあって、洋服や芸術など美しいものに影響を受けて育ちました。それもあって⾃分のことはちょっと変わり者だと思います(笑)。あらゆることに⾃分の考えを持っているし、着ている服も周りの⼈と違うのかも。 そして、少し反⾻精神を持ってこれまで生きてきましたね。 ⼤学は台湾のファッションの服飾専⾨⼤学に進み、卒業作品は⾃分の価値観を最大限に表現してニューヨークで展⽰しました。 ⼤学卒業後は、アパレル業界で頑張りたいと強く考えていたので、映画や舞台の⾐裳デザイナー、タレントのスタイリングなど、服装に関する仕事は何でもしましたね。ここ数年は、東京やニューヨークで何度か新作コレクションを発表しています。幸運にも台湾デザイナーの代表として、⾃分が⼿掛けたアイテムを東京とニューヨークで販売してもらうことができました。その経験をもとに、2017年オリジナルブランド「Seivson」の⽴ち上げに至ります。
ソン・ミジン(以下ミジン):⼦供の頃は両親に厳しく育てられたので、⾃分の意思で洋服も選べず、すべて決められたものを着ていました。その反動からか、ファッションへの憧れがどんどん強くなり、洋服にすごく好奇⼼を持っていました。韓国から台湾へ移り、タレントに転⾝したことをきっかけに、さまざまな洋服を着ることができました。 たくさんのコーディネートで日々活動する中で、洋服に対する知識やセンスが磨かれ、洋服に独特な考えが生まれるようになりました。 ファッションを通して⾃分の世界感を表現できるのが好きですね。 芸能⼈として活動しつつ、ファッション業界に⼊ってからは、韓国と台湾の架け橋として、台湾で韓国のさまざまなブランドを紹介し、販売し始めました。 そうした⻑年のバイヤー経験をもとに、シンと共に立ち上げた台湾と韓国のハーフブランド「Seivson」が、いよいよ2018のSSに初コレクションの発表となります。
<左>ジーチン・シン <右>ソン・ミジン
ーお二人のクリエーションの核となっているものは?
シン:⽣活の中で見逃してしまうような小さなことでも、⼤きな意味や役割を持つと考えています。
どんな些細なことも、おろそかにしてはいけないという気持ちで、ディテールなどすべてのデザインを構成します。
一般的な縫製の仕方にとらわれず、すべて一からデザインした服を作りたいと思っています。
「なぜこういうディテールなのか」など、着る人にたくさんのことを感じてもらえる服を作りたいですね。
例えば、⼥性らしいシルエットに、ハードなディテールを加えることで生まれる強い衝突がポイント。
思いもよらないような、まったく違う素材の個性をぶつけ合いつつ、なるべく違和感なく調和するデザインにしました。そんなサプライズも楽しんでいただきたいです。
ミジン:デザインの多くのアイデアは、私たちの仕事や生活から生まれています。私たちはそれぞれ、全く違う仕事もしています。
例えば、私なら芸能⼈とデザイナー。仕事をスイッチしていく中で、デザイナーに求められる新しい洋服と、メディアで求められる発信力のある洋服、
両方のニーズを満たすことができるようなデザインはないかと日々考えています。
ー台湾と韓国それぞれどんな文化的な影響がありますか?
シン:実際に台湾のアパレルは天候の影響がすごく⼤きいんです。四季がはっきりしていないだけではなく、⾬で湿度が高かったり、強い紫外線や、⼤気汚染なども大きな問題となっています。こうした環境問題から、台湾の人は変化する環境に適応する機能性を重視するようになりました。Seivsonもそんな⼥性の⽣活ニーズに合わせてデザインしています。
例えばトレンチコートは⽣地からUVカット、撥⽔、透湿などの機能が付いて、そしてメタルボタンはエコ素材で、アンチアレルギーのものを使っています。
ミジン:外⾒重視の韓国⼈は毎⽇コーデに時間掛かりますよね。誰でも他⼈の目に気にするし、服装も社会地位の表現方法の⼀つと考えてられています。
また最近、⼥性の社会的地位が向上しています。沢⼭の分野で活躍し、経営者として成功する⼈も少なくありません。多くの⼥性が「⾃分もいつかそういう⼥性になりたい!」と目標を持ち頑張っています。芯が強く、ブレない意志を貫く、「かっこいい女性像」は今や韓国ファッションのブームになっているんです。
ー今季のテーマを教えてください
シン:2018SSのテーマは「Nos Vies」(フランス語で「私たちの生活」)。
私たちのブランド名「Seivson」はこの言葉をフリップさせ、「⽣活をひっくり返す」というコンセプトを込めています。
日常⽣活に起こるあらゆることや、人生の経験から⽣み出したアイデアを曖昧なバランスで落とし込みました。
既成概念にとらわれず、激しさと柔らかさの中間に位置するスタイルを表現しました。
同時に、魅力的な女性の持つミステリアスな部分と、想像力を掻き立てるようなデザインを盛り込みました。
一見さりげなく見せつつ、他にはない洋服を目指しています。
ー特に注目してほしい点などはありますか?
ブランド名に込めた「⽣活をひっくり返す」というコンセプトを具体的なモチーフにした部分です。
例えば、今回使っているネジを服の切り替え部分に施したのですが、これは「服」というものを分解して、既成概念にとらわれない方法で組み⽴てる私たちのコンセプトを象徴しています。
全コレクションは温かみのある⾊を基調としながら、シルエット、ネジ、工事現場などで使われる3Mの反射⽣地などの作業着⾵のディテールで、
視覚的に強いインパクトを出し、温かな色味の裏に「不均衡の美しさ」を表現しています。
ー今後のブランド展開について教えてください
シン:近いうちに韓国のファッションや今流⾏っているものをもっと台湾や⽇本へ展開していく予定です。
そして⾃分のオンラインメディアを作ろうと思っています。
ゆくゆくはもっとファッション業界に尽力するために、学校で教えたり、本を出したいとも考えています。
海外では2年以内にブランドの直営店の出店を計画しており、最初はアジアを中⼼に展開し、その後ヨーロッパへ進出したいと思います。
ー日本での展開については?
シン:今は東京コレクションのために準備をしている段階です。いつか機会があれば、是⾮台湾と韓国のブランドと、⽇本の若⼿デザイナーたちとのコラボレーションをしたいと思っています。
異国間のカルチャーの融合によって刺激を受け合えたらいいなと思います。
Tzuchin Shen(ジーチン・シン/申⼦芹)
台湾実践大学ファッション学科卒業。卒業コレクションとして、ニューヨークで発表を行う。
映画などのスタイリストとして経験を積む。NYコレクション、東京コレクションでランウェイ形式の発表を行う。
2017年にSeivsonを設立。
Song Mi-jin (ソン・ミジン/宋⽶秦/송미진)
韓国にてモデル、女優として活躍後、2011年に韓国発の少女グループDream Girlsのメンバーとして台湾でデビューし、
役者として多くの賞を受賞するだけでなく、放送を通じてK-POPとその文化を発信している。
また、韓国の「avouavou」「venimeux」等のブランドの台湾における正規輸入を行うなどファッション事業も手がける。
2017年にSeivsonを設立。
Text : Yuya Uchida
Seivson 2018SS Collection
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