DESIGNERS' INTERVIEW
どこにでもある古着を、独自の視点で再構築し、新しい意味を持った服に蘇らせるYEAH RIGHT!!の洋服は、
古い洋書を現代の言葉に置き換える翻訳家のようにも思える。
そこには作り手の届かない厳然たる時間の積み重ねが存在するが、それすら喜んで受け入れる姿勢が、
この唯一無二のブランドを支える原動力になっているようだ。
今回、公私のパートナーであるデザイナーの河村氏と井村氏に、今期のクリエーションとその背景について聞いた。
<左>河村慶太 <右>井村美智子
ーYEAH RIGHT!!の立ち上げから12年。製作スタイルなど当初から変化したことは?
河村慶太氏(以下河村):立ち上げ当初は、デザインから洋裁まで、ほぼ境目なく2人でやっていましたが、レディースを強化していくうちに、デザインは井村が中心になっていきましたね。僕?僕はそれ以外の作業をしています(笑)。
井村美智子氏(以下井村):互いのやりたいことはある程度分かっているので、長けている部分は尊重し合いながら進めている感じです。「ケンカしない?」と、よく聞かれますが、意外とそんなことはなくて。こうしたいって強く思っている方に委ねると、結果的にいい作品ができ上がります。これが分かったのは最近の発見(笑)。信頼して任せ合えるようになってきているのかな。
ー古着を使ったアイテム製作を始めたきっかけは?
河村:洋服が溢れている今の時代に、僕たちまで新しいものを作る必要はないんじゃないかって。既にあるもの(溢れた洋服)を使って新たな服作りをするのがいいのでは?と、ちょっとした使命感のようにリメイクアイテムの製作を始めました。
ーリメイクの魅力について教えてください
河村:古着と聞くと“いわゆるヴィンテージアテイム”を連想しがちですが、選ぶ古着の基準は、古着自体の価値ではなく、YEAH RIGHT!!のクリエーションが入ることで際立つような古着。古着が辿ってきた歴史は僕たちの手には及ばないので、完成しても100%自分たちの作品ではないと思っています。“古着”という確立した素材を使う以上、完璧には思い通りにならないんですよね。
だからこそ、新作サンプルで発表したアイテムと、店頭に並ぶアイテムは必ずしも一緒ではない。例えば、受注を100着いただいたら、形は一緒でも古着の材料によってデザインは少しずつ異なります。バイヤー様やお客様から「サンプルで見たアイテムと同じデザインにしてほしい」という要望や希望の声もいただきます。できるだけニーズは汲みながらも、僕たちらしさも失わないように意識しています。
服作りは製作過程から「この柄はあのショップに合うな」とか、服が並ぶショップをイメージしながら作っています。ショップごとに柄が違うのも、楽しんでもらいたいですね。
ー近年、コレクションテーマに「Re:」掲げるようになった経緯と、2018SS「Re:ACTION(リアクション)」について教えてください
河村:ブランド立ち上げ当初にdaily life of the eternity(=永遠なる日常生活)と掲げてはいましたが、それはテーマがあってないようなものでした。今は何かしらテーマや制限をつけることで、新たな表現が生み出せたらと、リメイクを意味する「Re:」を掲げています。
「アクション」に含まれる活動的という言葉の意味に合わせて、スポーティーさを強めています。モチーフはフットボールシャツだったり、素材はナイロンブルゾンや、機能性素材などを選んでいます。と言うのも、古着の市場には、レディガガのロゴTシャツや、速乾性Tシャツ、ファストファッションのアイテムなど、まだ店頭に並んでいそうなアイテムが古着として出回ってきている。作る量が膨大過ぎて“古着の近代化”が進んでいるんです。それならば、その古着を使うのが自然な流れかなぁと、今回は挑戦も込めて取り入れてみました。
ー2018SSのティザームービー「RE:ACTION」の見どころを教えてください
河村:イメージルックの撮影現場で即興サンプリングユニットBervatra(バーバトラ)とのフォトセッションを行います。
その場で鳴っている音をサンプリングし、音楽に紡いでいく彼ら独自システムは、「リアクション」という今シーズンのテーマと、
古着を使う自分たちのリメイクにリンクしています。信頼したスタッフたちとの作品作りなので、何をしてもらってもいいと思っています。
撮影内容をあらかじめ決め込んで、当日に淡々と撮影をこなすより、何が起こるか分からないドキドキ感も今から楽しみですね。
Designers' profile :
河村慶太(Keita Kawamura) 1980年生まれ。文化服装学院卒業。
「ノゾミ イシグロ(NOZOMI ISHIGURO)」にてアシスタントを勤める。
井村美智子(Michiko Imura) 1980年生まれ。文化服装学院卒業。
エイ・ネット(A-net Inc.)に入社。「スナオクワハラ(sunaokuwahara)」にて企画として勤める。
2005年に1点物を中心とした制作を中心に「イエーライト(YEAH RIGHT!!)」設立
“daily life of the eternity” 日々の暮らしがソースとなり、『既にあるもの』の価値観を更新/問い直す作業から浮かび上がる服。
『服を着る行為』『服を売る行為』を掘り下げ、独自の答えを導き出す。
近年は、コットンを自分たちで栽培、収穫しTシャツを作る”KNOW COTTON PROJECT”や、BSフジのTV番組「ANSWERS」出演。
宇多田ヒカル、aiko、Twothなどのアーティストへの衣装提供、DRESSCAMPとのコラボレーション、
カンヌ国際広告祭(カンヌライオンズ)フィルム部門金賞作品「Love Distance」の衣装制作、
陶器ブランド「TALKY(トーキー)」、日用品×デジタルコンテンツを制作する「PEOPLEAP(ピープリープ)」など幅広く活動。
YEAH RIGHT!! 2018 SS COLLCECTION
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