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TALKING ABOUT THE ABSTRACTION
10%に込めたヴィンテージへの挑戦
SEENOWTOKYOプレオープンを記念した特別コンテンツとして、ヴィンテージの転写アイテムを核に、ファンを魅了し続けるTALKING ABOUT THE ABSTRACTIONをフィーチャー。16年間一貫して同じチームで洋服作りを続ける彼らだからこそ到達し得た、 ”ABSTRACTION”(抽象概念)の表現とは。大阪のアトリエ兼ショップでデザイナーの市原直樹氏に話を聞いた。
ーTALKING ABOUT THE ABSTRACTION(以下:TATA)のブランドヒストリーについてお伺いできますか。
「2001年のブランド立ち上げ初期から、50〜90年代のヴィンテージウェアをモチーフに物作りを行なっています。 前職はヴィンテージデニムのレプリカを作っていたのですが、ヴィンテージアイテムをただ真似るだけではつまらない、何か新しい要素を入れたいと考え、ヴィ ンテージアイテムの姿をそのまま異素材に変化させた転写シリーズを始めました。音楽や映画をデータに落とし込むように、一点物のヴィンテージも「情報」と して置き換える感覚です。 “触れるまで本物と見紛う” そんな不思議な違和感はずっと目指すところですね。過去へ敬意をはらいながらも、変化球は投げたい。90%はヴィンテージウェアへのオマージュで、残りの 10%で自分を表現しています。“10%のひねくれた部分”が、ブランドのコンセプトであり、僕らが抽象的(Abstraction)と呼んでいることです」
ー2017AWコレクションで発表された話題の“転写ダウンジャケット”についてお伺いできますか?
「ダウンジャケットは昨シーズンにスタートして、今シーズンはより立体的に進化しています。視覚と触覚でまったく異なるのが特徴ですね。転写技術に関して は、相当のこだわりをもっていて、転写を始めた当初、布地プリント工場ではなく、写真の現像を行う工場を訪ねたほど。また、16年同じチームなので転写の 再現性や洋服の機能性も上がっていますね」
ー本当に手に取るまでデニムジャケットかと混乱してしまうほどですね
「モチーフにした50年代のデニムジャケットのシルエットや厚み、ダメージやクラッシュ、細部の陰影まで立体的に表現するために、画像データを複数枚組み合わせたり、実物と同じ部分にステッチを施したりと、細かな技術が込められています。詳しいことはあまり言えないのですが(笑) 国産羽毛で知られる河田フェザーとのコラボレーションで、軽くて暖かい上質な転写アウターが実現しました。非常に軽くて薄いのでアウターはもちろん、コートのインナー使いなど、幅広く着こなせます」
ーコレクションのコンセプトとカルチャーの結びつきは?
「デザインは僕が親しんできたスケートや音楽のカルチャーを毎シーズンMIXして行なっています。 16SSには写真家の森山大道さんの写真を転写したアイテムを製作。転写をきっかけに、写真家やアーティストと繋がることが多いです。転写をアートと捉えてくださるようですね。服とアートの間に立つ媒介のような働きをしているのかもしれません」
ー次作の洋服作りのこと、今後の展望について教えてください
「今の気分は一見シンプルでイージーに着こなせそうでも、袖を通すと、センスの度量が試されるようなデザイン。どこかくせの強い“ストーリーのある服”を 作り続けたいです。 また、根底の転写技術はそのままに、(TATAを映画に例えると)スピンオフのようにブランドを細分化しています。ストリートで着るとき、海で着るとき、 チェアカバーのような雑貨など、シーンによって別ブランドとして発表し、それぞれに新たなストーリーを生むことで広がりを出していきたいと考えています」
市原直紀(Naoki Ichihara)
1973年生まれ。ショップ勤務、アパレルメーカーを経験後、2001年に自身のブランド 「トーキングアバウトジ アブストラクション(TALKING ABOUT THE ABSTRACTION) 」を設立し、ファーストコレクションを発表。
2005年より1年間、パリにて単独の展示会を行う。以後、海外での展開をスタート。
2003年、大阪・新町に直営店をオープン。(ショップは2009年に心斎橋に移転。)
2011年、レディースラインとして「Breathed Things TALKING ABOUT THE ABST RACTION(ブレスド シング トーキングアバウト ジ アブストラクション)」の展開をスタ ート。同年、アジア地区への販売エリア拡大。

Text : Naoco Okada
Photo : Yuya Uchida

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